夏になるとレモン色の小花を放射上に広げる「茴香(ウイキョウ)」が見頃を迎えます。
西洋では「フェンネル」として親しまれ、魚料理の香り付けや、オイルやビネガーの風味付けにも使われる、香り豊かなハーブです。
そんなフェンネルは、漢方では「茴香」という生薬としても知られています。
この名は、傷みかけた肉や魚に混ぜると香りが“戻る”ことから回香と呼ばれ、それが転じて茴香になったともいわれています。
使用するのは花ではなく熟した果実を乾燥させたもの。古くからお腹の張りや腹部の不快感にまつわる処方に取り入れられてきました。
特に暑さで食欲が落ちている時や、冷たいものが続いた日、なんとなくお腹が重い…そんな夏の小さな不調に寄り添ってくれます。
また漢方には「芳香健胃(ほうこうけんい)」という考え方があり、香りの力で胃を整える知恵があります。
茴香の香りは、気分を軽やかにするだけでなく、食事を受け入れる準備をそっと助けてくれるような、やさしい香りです。生薬というと、どこか難しそうな印象があるかもしれませんが、茴香は香りを楽しみながら自然に取り入れられる“薬っぽくない生薬”です。
食卓からのおいしい香りが、実は養生に生かされている…そう思うと、いつもの一皿も少し違って感じられるかもしれません。
蒸し暑くなるこれからの季節に“香りで整えるやさしい知恵”を暮らしの中に取り入れてみてはいかがでしょうか。
月刊さるぼぼp46掲載


















